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低緯度、とりわけ地域的に乾燥する熱帯地域では、わずかな温度上昇でさえ農作物の生産性は減少し、飢餓リスクが増大する見込みである。
干ばつと洪水の頻度の増加も、とくに低緯度地域の農業に打撃を与えると考えられている。
温暖化に起因してある種の魚種の分布にも変化が生じ、養殖・淡水漁業に悪影響を及ぼすと予測されている。
海面上昇は、とくに発展途上国において顕著な影響を及ぼすが、影響を受ける人数としては、アジアとアフリカの巨大デルタ地域が最も多い。
これらの地域では、洪水の増加に起因して最も高いリスクに直面すると予測されている。
温暖化による亜熱帯地域の拡大に伴い、マラリアの発生範囲や伝染可能性が増加すると考えられている。
さらに、下痢性の疾病による負担増、熱波・洪水・干ばつ等の多発等により、とくに発展途上国における適応力の低い人々の健康状態に悪影響を与える可能性が高まるという。
熱波・洪水・干ばつ・台風等のリスクは世界各地で高まるが、例えば海水温の上昇によってハリケーンの風速が5〜10%上昇すると、米国では年間被害額が現在の2倍になると予測されている。
さらに、温暖化が進むと加速的な気候変動が生じ得ることを危ぶむ声もある。
温暖化により、ツンドラ地域の永久凍土の融けるスピードが加速され、閉じ込められていたメタンが大量に放出される可能性があるという。
メタンは、温暖化係数はCO2の21倍もあるため、メタンの大量放出により温暖化が加速される懸念もある。
さらに、温暖化が北大西洋での海流の深層循環に影響を与え、長期的には地域の気候変動をもたらす可能性も懸念されている。
これらの影響の度合いや内容については不明な点が多く、さらなる研究が待たれるところではあるが、急激かつ長期にわたる取り返しのつかない変化をもたらすと懸念する声もある。
「スターン・レビュー」によると、こういった温暖化に伴う各地域・各分野への影響により、その経済的損失はGDPの5〜20%に及ぶ可能性があるという。
しかし一方で、温暖化の程度を最小限にする努力(具体的には、温室効果ガスをCO2換算500〜550ppmに安定化させること)に必要なのは、2050年までに平均しておよそ年間GDPの1%程度のコストが必要と見積もった。
GDP1%は高い数字ではあるが、対策を講じなかった場合の経済的損失よりは遥かに小さいという。
このように温暖化がもたらす影響は甚大であるため、当然ながら、企業経営にも中長期的には大きな影響を受けることは避けられないであろう。
これらの影響は、地球環境変化それ自身によるものもあるであろうが、直接的には、環境政策や世論の動向がそれを加速させると考えられる。
例えば、政府からの要請により、CO2排出削減のために旧設備を更新する、エネルギー利用の手段を切り替える、といったコストのかかる対応をしていく必要が出てくるであろう。
しかしながら、企業とはそもそも外部環境のあらゆる変化を予測し、適切に対応することで他社との競争に打ち勝つことを宿命とした存在である。
先進国においても大気汚染問題が深刻だった時代、日本の自動車会社が米国の排出ガス基準にいち早く対応し、市場を拡大した例もある。
その意味で、温暖化への対応が求められる状況は、企業にとってチャンスともいえる。
すでに、例えばハイブリッド自動車に見受けられるように、CO2排出を抑えた製品は燃料費の高騰の影響もあり順調に売上げを伸ばしている。
また、温室効果ガスを排出する権利である排出権をめぐるビジネスも活発に動き出している。
詳しい説明や事例紹介は後章に譲るが、企業は、温暖化がもたらすマイナス影響とビジネスチャンスの両面を見極め、迅速に行動していく必要がある。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、国際的な専門家で作る政府間機構のことで、地球温暖化についての科学的な研究、データ収集・整理を行うため、1988年にUNEPとWMOが共同で設立。
国際的な地球温暖化問題への対応策を裏付ける組織として、大きな影響力を持っている。
Mがかつて提唱した、地球が約10万年間隔で氷期と間氷期を繰り返すのは地球の公転軌道や自転軸の傾きの微妙な変化が原因という仮説を、東北大学や国立極地研究所など日米欧の研究チームが南極の氷を使った過去の気候の解析で実証し、2007年8月23日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。
太陽の活動と近年の地球温暖化との関連については、2007年7月の第30回宇宙線国際会議で、ランカスター大学のS教授と、グラム大学のW名誉教授が否定的な見解を発表した。
IPCC第4次統合報告書(2007年11月)では、「今後20〜30年の努力と投資が、長期的リスクの低減や回避、遅延の度合いを決める」と主張した。
地球上の平均気温の上昇を20〜2.8℃以内に抑えるには、温室効果ガス排出削減のためのコストは2030年までに世界のGDPの3%、2050年までに最大5.5%(年間0.12%)になると試算した。
温暖化はたしかに進行しており、その原因は人為的活動によっている。
こうした認識を前提に、その解決の手がかりの第一歩として「京都議定書」は生み出された。
それは先進国の温室効果ガス(GHG)排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国ごとに設定するものだ。
「国の温室効果ガス排出量を総量でとらえたこと(総量主義)」と「法的拘束力で削減を義務付けたこと(規制措置)」が、京都議定書の最大の特徴だといえる。
しかし、実は京都議定書に異を唱える主張も数多い。
京都議定書を「国際的な合意」として認めないという主張である。
そうした主張が出てくる背景には、世界が、もしくは自国が、どのような温暖化防止策を採用するかが国益に直結する問題になるという事情がある。
勘の鋭い企業経営者ほど、温暖化防止策の疎ましさを敏感に感じとる傾向が強い。
企業はこれまで、地球温暖化というコストを負担せずに生産活動を実現させてきた。
温室効果ガスを排出しすぎだとの理由で、罰金をとられることなどありえなかった。
それが、総量で温室効果ガスの排出量を抑制する義務を負わされる可能性が出てきた。
こうなると、これまでダダと考えられてきたことにコストが生じる。
これはしばらく前の廃棄物の処理をめぐる現象と似ている。
企業はかつてほとんどコストをかけず、工場敷地内に穴を掘って廃棄物を埋めていた。
それが外部の処理業者に処分を託すようになり、大きなコスト負担となった。
しかも、中国やインドなどの発展途上国とグローバルな国際競争が展開されている現在、こうしたコストの発生がある一部分の国だけに限られるのだとしたら、コストが発生する国で生産活動を行う企業はコスト競争上不利になる。
これまで無料で食べることができたランチが突然、有料化される。
しかも有料化はすべての人に義務付けられたものではなく、何人かが狙い撃ちの対象になっている。
そこでは「なぜだ」という声が当然あがるわけである。
2001年、京都議定書の批准を拒否した米国の論理は、こうした企業経営者の意見を代弁している。
「京都議定書が、実際には多くの国に対して遵守義務を免除しており、また米国経済に深刻な悪影響を及ぼす」というのが主張の核心にある。
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